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「イヤッ!」 男の手を思いきり振り払って、逃げた。 自分でも驚くほどの大声が出た。 男がひるんだ隙に森林を駆け抜け、傍にあった公園に逃げ込み、ドラム缶の中で肩を震わす。 怖い 男の人は大きくて、汗臭くて ギラギラしていて ――怖いっ! 先ほどの恐怖が体の中を走った瞬間、優しい瞳があたしを捕えた。 「みう? どうしたの? おなかいたいの?」 首を傾げ、手を差し伸べてくれたのは、ドラム缶の奥に隠れていた遥斗だった。 それからあたしたちは、友達と一緒に走ってその場から離れ、互いの家へ帰った。 お父さんもお母さんもいなかった。 二階へ駆け上がり、ベッドの上でブルブルと震えるあたしの側に遥斗も座る。 その震えは収まらない。 怖い怖い 男の人は、怖い―― 蘇ってくる恐怖と戦うあたしの思考を閉ざすように 遥斗の手があたしの目に宛がわれる。 あたしの目隠しされ、遥斗はそっと言ったんだ。 「みう。きょうのこと、ぜんぶわすれて これからは、ぼくがみうをまもるから」 って…………。 泣きつかれたあたしは、遥斗の隣で眠りについた。 極度の恐怖と緊張は、遥斗の言葉を信じた。 催眠術にかかるように……
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