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ウミがいなくなって、二年が経った。 あんなに探し回ったのに、ウミはどこにも見当たらない―― 当たり前だ。 俺は彼女の事を何も知らない、住所も学校もそして、本当の名前も。 「侑成-御飯よー」 「わかったー!今行くー」 「お兄ちゃん、早くっ!」 「わかったって。苦しい、雨美っ」 俺に最高の幸せを届けてくれた彼女。 たった二週間で俺の鉄壁の心をかっさらっていったウミに会いたい 俺はその一心で、進学校を音楽科のある高校へと変えた。 この辺りでは一番有名な学校だ。 そこへ行けば、ピアノを愛したウミと会える気がしたから。 荒削りの俺の演奏を評価してくれたおじいちゃん先生のお陰でなんとか合格出来たけど、そこにウミはいなかった。 音楽科の練習は厳しく、基礎のない俺はついていけるはずもなく、いつもムシャクシャしていた。 そんな気持ちを抑えつけながら もしかしたら、途中から編入してくるかもしれない。 二年になったら入ってくるかも…… そんな願いを胸にウミの事を待っていた。 俺にはそんな事しかできない。
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