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ウミは片手を庇(ひさし)にして真っ青な空を見上げる。 腕が君の顔を隠して。俺は―― 俺は思わず、いつも持っていた彼女が残したルーズリーフを手に取った。 それを紙飛行機の形に折って、届けと念じて音楽室から飛ばす。 一瞬だけ舞い上がった風に乗って、紙飛行機が君の元へ届いた。 それは、奇跡だと思った。 二年間、俺の手元にあった紙を受けとり、君はゆっくりと広げる。 君は紙に書かれた文字を静かに目で追った後、優しく優しく微笑んだ。 その後、君の周りに女の子が二人、寄ってくる。 ウミはルーズリーフを丁寧に折って、生徒手帳に挟むと 風に流される髪を抑えながら、屋上を後にした。 友達に囲まれて 楽しそうに 幸せそうに 俺の視界から姿を消した――。
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