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「栞さんですよね。また来てくれたんですね。凄く嬉しいです。僕、ずっとあなたに会いたくて仕方がなかったんです。ありがとう」
栞は、瞼を閉じて、片思いする彼にそんな言葉を掛けられる妄想に浸っていた。
「しーちゃん、黒板の文字消されるよ!」
有沙は右隣の席に座る栞の肩を叩いた。
「あっ、ヤバい!!」
栞は、有沙の言葉を耳にし、我に返ると、あせってシャープペンを握った。その時は、既に黒板が消された後だった。
「後でノート見せてあげるから」
有沙は呆れたように言った。
「有沙ちゃんいつもありがとう」
「しーちゃんはここの所いつもこうなんだから!また大輔の事を考えていたんでしょ!」
「大輔君…」
栞は、また瞼を閉じて妄想の世界に入っていった。
「今は授業中よ。集中しなきゃ!」
「すみませんでした」
栞は、我に返ると有沙に軽く頭を下げた。
栞は、神奈川県内の国立大学に通う2年生。栞の通う大学は、全国的にもそれなりに名が通っていて、偏差値も割と高い。
栞は、今人気急上昇中の演歌歌手の工藤大輔の大ファンで、ショッピングセンターで行われるミニライブや握手会、トークショーなどのイベントや、コンサートに度々足を運んでいる。イベントには、1人で行く事もあれば、大学の友達である有沙と一緒に行く事もある。
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