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例えば、あの子の筆入れが無くなる。 けれど、それはすぐに、 教室の何処かから、簡単に見つかるのです。 誰が探し出した訳でもなく、いつの間にか、 皆の目につく所に現れるのです。 実習のエプロンも、体操服も、 あの子のお気に入りのポーチも。 無くなるけれど、すぐに見つかる。 あの子が困って泣き出した途端に、 どこからともなく、現れるのです。 結局、いつも、あの子がウッカリしていて、 何処に置いたのかを忘れたのだ、 という結論に収まりました。 もともと、そそっかしい子でしたから、 そのことを、誰も疑わなかった。 でも、私は知っていました。 あの子が、置き場所を間違えた訳ではない、と。 なぜ、そう思ったのか、気になりますか? さしもの貴女も、そこまでは、 ご覧になっていなかったのですね。
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