夕暮れの時間 短編集

離してくれない

また明日からお願いしなければならないから今日は自宅でゆっくりされて下さい、とお願いすると
そうね、という事になった。

みんな疲れてる、もちろん俺も。

慌ててさっき典子の言ったへそくりの通帳を探し出し（クローゼットの下着の下に隠してあった)
言われた通りのものを探し出した。

戸締りを確認してふと水槽を見ると
「へそくり見つかった？」
でめちゃんが起きていてこっちを見ていた。
「あったよ」
金魚は大きくうなづいた。
人間くさい動作に思わず笑いたくなる。

「明日はマサルを早く起こしてやって。あの子目玉焼きが作れるから」
「あと水槽の横の板を立てかけていってね。
まぶしいと眠れないのよね」
「また明日ね」
テキパキとそれだけ言ったらでめちゃんはまた沈んでしまった。
でめちゃんはそそっかしい典子そのものだ。

明日のでめちゃんは何を言うのかな？

俺も寝よう。
明日の為に。