夕暮れの刻

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今日も来てしまった。 いつもの歩道橋の下にしばらく立ってから枯れた花やお菓子を片付けて、新しい花をー今日はマーガレットだー供えようとしたところで「こんばんは」と声をかけられた。 軽い茶髪に私の住んでる近所の高校の制服を着ている。 そして…何故か 彼は幼稚園くらいの男の子の手を引いていた。 胸がチクリとした。 そしてその子は男の子よりまた少し大きい女の子二人と手を繋いでいて何故か全員で横並びになっている。 女の子二人は…そっくりだ。 みんなにこにこしてる。 よく分からない取り合わせだ。 右から左、左から右にまじまじと見てしまった。 「こんばんは。」と急いで言って 「ごめんなさい、なんでしょう?」 ごめんなさい、はじろじろ見てしまった事に対してだ。 全然気にしてない様子で、高校生の男の子がまたにっこりした。 「僕達、ケイ君の友達です。」 「そうなの、ありがとう。」 とりあえずお礼を言った。 「お参りしてもいいですか?」 そう言ってくれたので 「ありがとう、どうぞ」とお花の前の場所を空けると 一人ずつ、お参りしてくれた。 また目が丸くなってしまった。 高校生の男の子から手を合わせてくれたのだが、しゃがんだ彼の背中や肩に残りの三人が手を添えている。 今度は男の子。女の子の一人が男の子の頭に手を当てている。 「ミウ、ふざけてちゃ駄目だよ。」 もう一人が注意した。 「だって、リクが小ちゃいから当てるとこがないんだもん。」 ミウ、と呼ばれた子が口をとんがらかす。 どうやら彼女達は双子の女の子で注意した方がお姉ちゃんっぽい。 「ケイ君に失礼でしょ」 「大丈夫よ、きっと喜んでるわ」 思わずそう言うと彼女達は 「小母さんも見えるの?」 え?何が? 「そんなわけないよね。」首をひねって私の背後を見ながら 「見えてたらこっち向いてるよね。」 と呟いている。 え?え? 「次はお前達の番だぞ。」高校生が今度は双子を促して二人は並んでお参りした。 男の子は女の子の背中の真ん中を、高校生は右の女の子の左肩、左の女の子の右肩に手を置いている。 不思議なお参りが終わるとまた元のフォーメーションに戻った。 「ありがとう、ええと…?」 色々聞きたいけど何から言ったらいいのかしら? 「僕達はケイ君とここで友達になりました。」 「僕達は、視えるんです。」
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