夕暮れの刻

6/10
前へ
/73ページ
次へ
どこか違う場所をと聞かれて、近くの神社に歩いて行く事にしたのだけど、歩道橋の下から離れると四人は手を離したが互いに離れないようにしているようにくっついて歩いていた。 よくわからなくてなんだか怪しい気もするけど… まだ一緒にいたいと思った。 神社に着くと、まずお参りをした。 四人は慣れた様子で手を清めて丁寧におまいりをした。 最後にいた麻里子は 仕事のようだわね、と思った。 お参りを終えて下の境内に集まると高校生がこちらを向いた。 「僕は空と言います、それとカリンにミウ」 「ボクはリクって言うんだ!」小さい男の子がぴょこんとおじぎをした。 「私たち、春からプールに行ってるの。」 ミウちゃんでない方の子だからカリンちゃんか。 しっかりした口調で話し出した。 「バスに乗って行くんだよ!」リク君が口を挟む。「信号待ちの時に小母さんの 後ろに立ってるケイ君を見つけたんだそうです。」 「心配そうだったの。」 「ケイ君、小母さんにぴったりくっついてた。」 びっくりして目を見開いてると 「それでみんなで話を聞きに行きました。」 三人はケイ君とはすぐに仲良くなった。 「一人で帰る途中で赤いトラックに跳ねられた、って教えてくれたの。オジサンだったって。あんまり痛くなかったって。」 「それでお母さんはすごくお父さんに叱られたんだよね? いつも迎えに行くのになんで今日行かなかったのか、って?」 ああ、そうだった。 その日はパートの仕事が終わらなくて迎えに行けなかったんだ。 「「役立たず!」って言われてた、ボク悲しかった。ボクだってちゃんと見てたのに轢かれちゃったんだもん。お母さんも悪いの?」 ミウちゃんの顔を見てはっとした。 口をとんがしながら喋る仕草はケイ君そっくりだ! 「ミウはケイ君と話ができるんです、僕らにはできない。 僕らはそれぞれ出来ることが違うんです。」 空は静かに言った。 麻里子は話し始めた。 去年の今頃に息子のケイ君が横断歩道で事故に遭った事。 夫に凄く責められた事。 それまで延び延びになっていた歩道橋がすぐにできた事。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加