夕暮れの刻

8/10
前へ
/73ページ
次へ
日にちは来週の木曜に決まった。 「本当にありがとう」そう言うと三人がにこにこした。 リク君は半分眠ってるのかソラにおんぶされたままふわあーと生あくびをした。 それから木曜日までそわそわして過ごした。 パートの仕事もなんだか上の空になってしまう。 幸いあまり忙しくなかったのでなんとかなったけれど。 やっと木曜日。 花束ー今日は白いスプレーバラとかすみ草を奮発したーと用意したものを持って家を出た。 歩道橋の下で片付けやお花を供えたりしていたら 「こんばんは」と知らないおばあちゃんに声をかけられた。 「こんばんは」とかえすと 「お花を供えていいですかの」と花を差し出された、 白いバラとマーガレットの花束だ。 ケイ君が好きな白い花だー 丁寧にお礼を言ってお供えすると おばあちゃんはゆっくりとお参りしてくれた。 とても長い数珠を手に巻いてもごもごと何かをつぶやいている。 ふと顔をあげて、 「いまから来る子供達の祖母のタネです」と自己紹介された。 「やはり子供達だけでは心配で」 そう言いながらにこにこしている。 「お手並み拝見ですよ」 「それは大掛かりになってしまいすみません」 恐縮して頭を下げると 「いえいえ」とぐるりと見渡して一箇所に目をやるとにっこりした。 「ケイ君はいい子だし、みんなが助けたくなるのも無理はない」 「見えるんですか?そこにいるの?」 おばあちゃんは麻里子の問いには答えずに 「調子次第だと思いますよ」と呟いた。 そして着物の袂から携帯を取り出すと 電話をかけた。 「こっちは大丈夫、さてはじめよう」携帯をパタリと折ってしまう間もなく細い路地から四人が飛びだして来た。 「おばあちゃん!」 今日も手を繋いできたが、走ってくる途中で慌てたのか双子の手が離れた。 「こりゃ!ちゃんと繋がんと!」 おばあちゃんが鋭く叱責した。 二人は急いで手を繋ぐと 「ごめんなさい」と小さく謝った。 「わかればいい」きりりとして 「これからやる事はきちんとやらないといけない。 きちんとできないなら止めて帰った方がいい。ケイ君に失礼じゃろ」と双子を諭した。 「はい」 「はい」双子はおとなしく返事をした。 よくわからないが始まるようだ。 麻里子は荷物を隅に寄せるように置くとぎゅっと両手を握った。 いつものお参りを始めた四人は今日はそれぞれ数珠を手にかけていた。リク君も口を引き締めていて緊張した様子だ。麻里子も一緒に硬ばった。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加