夕暮れの刻

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「さて、始めよう」 おばあちゃんの一言で五人はぞろぞろと動き始めた。今日は前列に左から双子ちゃんとリク君。それぞれ手を繋いでいる。 後列におばあちゃんとナオキ君。 おばあちゃんは双子ちゃんの肩にナオキ君は双子ちゃんの片割れとリク君の肩にそれぞれ手を置いた。 おばあちゃんが人気のないのを見計らって。 「いいかの?」 「はい」一斉に目を閉じると。 「約束だよ。近づいてはいけない。触ってもいけないよ。」とじっと横に少し離れた私を見ながら言った。 「はい」よくわからないままに返事をすると 「出ておいで」と促した。 ぴょこんと出てきたのは…リク君だ! まん丸の目にあの日のボーダーのTシャツだ! 叫びそうになるのを両手で抑えてると 「お母さん」と呼びかけられた。 「僕の帽子持ってきてくれた?」 荷物をチラッと見ると「ありがとう」と言ったと思ったらもう被っていた。 靴も履いている。 履きたかったんだよね、まだ履いてなかった新しい靴。 「お母さん」 「ぼくのことは心配しないで。また会えるよ。お母さんが楽しくしてくれるとぼくはうれしいよ」 ふっっ…と姿が消えそうになる。 ゆらゆらしてる。 「そろそろ限界だ」 おばあちゃんが静かに言った。 ミウちゃんがしゃがんでいる。 「お母さん、ありがとう。」 気がつくとミウちゃんが喋っているのだった。 「ありがとう」これ以外言葉が出ない。 「ありがとう」 ゆらゆらしたしたケイ君がにっこりして、フッと消えたとたん蛍のような光になって…飛んで行った。 どんどんどんどん高く高く… それをみんなで見送った。 その後みんなでこの前の神社にお参りに行った。 「本当にありがとうございました」 と麻里子は皆に深々と頭を下げた。 「良かったのじゃ」 おばあちゃんの言葉にみんながうなづいた。 「あそこにずっといると」見上げて 「帰り道がわからなくなってしまうからの」 そうなのか。なら良かったと思いたい。 元気そうなほっぺたを思い出して一瞬悲しくなったけど安心もした。もう痛くないよね?
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