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憧れの着物に浮かれたわたし。
後ろを歩く先生を手招きした。
「早く行こうよ?」
「巧く化けたな。」
「しぃ~~!!」
「はいはい。ま、似合うんじゃね?」
ボォッ!!
耳も頬も朱に染まっているのがわかる。
先生は低い声で笑いながら、わたしの手を引き寄せた。
「安心しろよ。俺の側にいれば大丈夫だ。狐火は出すなよ?」
「はぁい。」
わたしたちは妖狐である。
指導係である先生が、もし変幻が出来るようになったら、七夕祭りに連れていってくれるという約束を守ってくれたことが嬉しかった。
「危ないっ。」
ぶつかりそうになったわたしを、素早く助けてくれた先生にドキッとした。
……先生、好きです。
言えない。
今までもこれからも。
庇ってくれた時の横顔も
時折見せる優しい笑顔も
変幻を解いた時の素顔も
色褪せない思い出として、わたしにください。
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