第2章 死骸とネコと、半心の悪魔 ─ ケース3 ─

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「ナギサが……僕と同じ養護施設に……」 「イサナ君がいた頃に、ナギサ君もいたはずですよ」  長田所長の言葉を聞いて、毅然としているナギサを振り返った。  そのナギサが前を見据えたまま、ズイッと歩を進める。 「今の私は死番の助死師だ。迷いし魂を死送るのが使命」 「ええ。私が許可しますから、思う存分にやってください。これからは君たち若い世代が活躍する時代です。 老兵は去るのみですが、若い者を援護するのも務めですからね」 「あ、ありがとうございます、長田所長ッ」  すべてを託してくれた先人に、頭を下げて謝辞を告げるしかなかった。 「2人とも、頼みますよ」  長田所長がうなずいた。 「ユキナちゃん、ここで待っててね。必ずミヤビちゃんを助けて戻るからね」  僕はひざまづいて、不安に瞳を曇らすミヤビちゃんに告げた。  小さな少女は不安を払拭するように、強い心で笑顔をつくる。  その小さな手に握られているのは、ネコのマークがある名刺だった。 「ユキナ、約束する。お前の友達を救うと」  ナギサもひざまづいてユキナちゃんを抱きしめた。 「お姉ちゃん、お兄ちゃん、ユキナ待ってるから!」  顔を上げた少女の瞳には、もう不安の色は見当たらなかった。 「イサナ、行くぞ」 「ナギサ、任せて」  僕とナギサは立ち上がり、施設の職員が見守る部屋に足を進めた。  職員たちは皆一様に顔を強張らせ、恐怖に身も心もすくんでいる様子である。  その怯えた職員たちが、ナギサを前にすると気圧されるように道をあけた。
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