第2章 死骸とネコと、半心の悪魔 ─ ケース4 ─

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 ナギサと共に赤海家に辿り着くと、脇に相談所の公用車が駐まっていた。  やはり美蝶子さんは赤海家に来ているんだ。  赤海邸は灯ともしごろなのに、照明が点いていない。  深として暗く、人の気配がなかった。 「監禁されているかもしれない妹のアケミを救出すればいいのだな」  ナギサが声をひそませて言った。  ここに来る道すがら、姉のアエカちゃんと母親の理恵花さんとの経緯を話してある。 「うん。僕は美蝶子さんを探すから、ナギサはその間にアケミちゃんを保護してほしい。 もし理恵花さんと遭遇しても、僕が何とか話を誤魔化すからね」 「了解した」  ナギサがうなずく。  念のためインターホンを押すが、いくら待っても返事がない。 (理恵花さんは家を留守にしがちだと言っていたが、姉のアエカちゃんもいないのだろうか)  恐るおそるドアノブに手を掛けると、ギイッと音をたててドアが開いた。 「ごめんください、相談所の猫屋田です」  挨拶するが、むろん返事はない。  玄関は薄暗く、その奥に続く廊下までも暗然としている。  ふと視線を下にすると、たたきに見慣れたスエードのパンプスがあった。美蝶子さんのである。 (やはり美蝶子さんは家に上がっているのだ。何て無茶な人なんだ)  理恵花さんがハンドバッグから刃物を取りだす映像が、妄想となって脳裡に明滅する。  その妄想の理恵花さんは、半分が邪な笑みを浮かべ、もう半分は心ない無表情な顔をしていた。まるで悪魔のように。  思わず全身が総毛立つ。不吉な予感が止まらない。  こうなったら家に上がるしかなかった。
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