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(ナギサと美蝶子さんが刺される!?)
身を盾にしようと踏みだして、足が止まった。
異変に気づいたからだ。
理恵花さんが果物ナイフを振り上げたまま、眼を見開いて固まっていた。
「あっ……あっ……アエカ……」
唇を震わせながら驚きの声をもらした。
驚愕のあまり果物ナイフを落として、崩れるように床にうずくまった。
「ママ、アエカは無事だよ、安心して」
アエカちゃんが健気に言うも、理恵花さんは一顧だにせず半分の眼球を震わせている。
「ママ……!?」
アエカちゃんが母親の只ならぬ様子を訝しんで後ろを振り向いた瞬間、大きな眼を見開き表情を凍らせた。
「そんな……ありえない……!?」
母親の半分と同じ表情で驚愕している。
(2人とも何をそんなに驚いているのだろう?)
おもむろに振り向くと、何かが近づいてくる気配がする。
「──……ひいぃ……」
ペタペタ。
「──……ひいぃ……ひいぃ……」
ペタペタペタ、とヨロヨロと裸足で近づく音がする。
ようやくナギサと美蝶子さんも振り向く。
燭香の焔がゆらりと闇を照らした。
そこに立っていたのは、闇に白く仄光るアケミちゃんだった。
アエカちゃんと瓜二つの白い相貌をもつ、一卵性双生児の妹である。
だが様子がおかしかった。
その雪をも欺く白く艶めかしい腕を、どす黒い血に濡れた口で噛んでいた。
「……ひいぃ……ひいぃ……」
腕を強く噛んだ口から、かすれた呼気のような声をもらしていた。
いや、それは恐怖を押し殺す悲鳴のごとく聞こえる。
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