第2章 死骸とネコと、半心の悪魔 ─ ケース4 ─

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 その矛先をかわすために、笠所長や服部次長が相談所を代表して謝罪した。  そのような経緯もあり、マスコミから逃れるため相談所を休むよう促される。それも半ば強制的に命ぜられて。 「今回の件で厚生労働省から監査官が来るみたいなのよ。それまで2、3日休んでちょうだい」  女史が言った。  僕はまた公園に来ていた。  マリーゴールドの咲く花時計のところに、ナギサがいた。  花時計の周りに黄色と橙色のマリーゴールドが、目にも鮮やかに咲いている。  この花時計は、バチカンにあるサン・ピエトロ大聖堂のクーポラの頂上を模していた。  クーポラとは、教会などにある丸天井のドームのことである。  花時計はその通りに、マリーゴールドのある花壇が丸く囲み、その中心に12のカリヨンが美しい鐘音で時を告げる。  その花時計にあるベンチで、ナギサが絵本の絵を描いていた。 「座ってもいいかな?」  おもむろに訊ねると、彼女が黙ってうなずく。  ベンチに座り遠くを眺めた。  花が風に揺れて、甘く清爽とした香りがくすぐる。  風光る噴水広場では、小さな子どもたちが跳ね水と戯れていた。  寛やかに時が流れゆく。 「アケミちゃんが言った言葉が忘れられないんだ」 「どんな言葉だ?」  ナギサが短く訊いた。 「あのときに言った言葉嬉しかったです、とアケミちゃんが言ったんだよ。 僕はその前アエカちゃんを装っていた彼女に、子どもが生まれてくるのは愛されるためだと言った」 「ああ。子どもは親の愛が必要だ」 「理恵花さんが悪魔だと罵ったけれど、僕はそんなことないと思うんだ。 きっと双子だから、天使と悪魔の心を半分ずつ持って生まれてきたんだよ」
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