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「うん、必ずだよ。それでね、あのねあのね──」
ユキナちゃんがそう言いながら、何やらポケットをまさぐっている。
「あった。ここが今度行くお家だよ」
ハイと差しだしたのは、ネコのマークのある名刺だった。
その裏に拙い文字で住所が記してある。
その上にはカラフルな色使いのクレヨンで、“アベックできてね”と書いてあった。
「保育士の先生に預けようとしていたけど、お兄ちゃんに渡せて良かった」
「ユキナちゃん、ありがとう」
少し涙ぐむユキナちゃんの手を握る。その手は小さいけれど熱かった。
無限の可能性を秘めた子どもの手である。
児童福祉司をやっていて良かったと、胸に沁みた。
「イサナ君、その優しさを磨きなさい」
犬頭先生が深い声で言った。
大きな影に寄り添う小さな影が去っていくのを、ナギサと並んで見ていた。
「幸福になってほしいね」
「ああ。そう願わずにはいられない」
さすがのナギサも感慨深げである。いつまでも遠くを眺めている。
「あの、すみません」
と遠慮気味な声がした。
声のした方を見ると、そこにユキナちゃんの保育士だった女の人がいた。
ミヤビちゃんの件でも世話になった人である。
「あの、わたしヒナタです。名前まだ言ってませんでしたね」
ヒナタさんが名乗るが、その声はかすかに怖じけていた。
きっとナギサを目の前にして気後れしているのであろう。
「ユキナちゃん、里親が見つかって良かったですね」
「はい……。それで実はお話ししたいことがあるのですが……」
ヒナタさんが人目を憚るように声をひそませて言った。
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