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「アオネさん……ですか?」
「猫屋田イサナ、服部女史に頼んだだろう? 3年前の母子無理心中事件を調べている記者とはあたしだよ。
もっとも、事件記者じゃなくてオカルト雑誌の記者だけどね」
「オカルト雑誌って、心霊とか超常現象を紹介するやつですか?」
「概ねそんなところさ。それよりも──」
とアオネさんが言葉を句切って、ナギサの全身を舐めるように眺める。
「あんたが噂に名高いナギサだね」
「榊花ナギサだ」
ナギサが視線をものともせずに言うと、
「その二つ名は、死番の助死師かい?」
アオネさんは不敵な笑みで訊いた。
「私は死送りの助死師だ。アオネ、私たちのことに詳しいな」
「これも性分でね、自分が関わる相手の情報を調べるのは。それに扱うのが危険極まりない事案だから、用心に越したことはないさ」
ナギサの訝しげな眼にも臆さず、アオネさんがゲシゲシと頭を掻いた。
「アオネさん。その危険な事案とは、3年前の母子無理心中事件のことですか?」
「それだけじゃないさ。大宮ミヤビの騒動や赤海アエカの虐待死にも関わることなんだよ」
「アエカちゃんのことも知っているのですかッ!?」
僕たちの行動を逐一監視していたことに驚きを禁じ得なかった。
一見して無秩序なこれらの事件に、一体どんな関連性があるというのだろうか。
「ここで立ち話も何だから、場所を改めて明日会おうか」
アオネさんが思案気な顔で告げた。
翌日は相談所が休みだったので,午後から『香処 卦限儀』に行く。
ここが昨日会ったアオネさんの指定した会合場所だったからである。
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