第3章 世界の涯てに泣く者と ─ ケース3 ─

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「そ、その秘密文書保管所は秘密と冠しているが、今では外部研究者にも公開されているからそれ程でもないさ。 その秘密文書保管所のさらに奥、教皇庁でも数名しかその存在を知らぬとされる秘匿文書保管庫があるのさ」 「そんなに重大な秘密なら、なぜアオネさんが知っているのですか?」 「そこにツッコむのかッ? そこはオカルト談義のお約束なんだよ!」  僕のツッコみを土足で踏んづけて、アオネさんが話を邁進させる。 「その秘匿文書保管庫に出入りを許されていた者が、ある日を境にそこを辞めて姿をくらましたんだよ。 それが原因で教皇庁から破門された外道神父──ヨハネ黙示録四騎士の名を冠する異端者、その名はペイルライダーだよ」 「やはり……ッ」  期せずして放たれた名前を聞いて、重く呻きの声をもらした。  青白い相貌に黒い司祭服の神父を思い浮かべ、 “白い顔の黒い悪魔がやって来るよ”  養護施設で井坂アキオ君の霊が残した言葉が甦る。 「どうやらすでに会っているようだね」  アオネさんが「ふふ~ん」と鼻を鳴らすと、ナギサが鋭い声で答える。 「大胆不敵に挨拶してきた」 「あるいは警告かもしれないね。これ以上関わるなという脅しか」 「どちらでも一緒だ。敵には変わりない」  ナギサが怒りを露わにして言った。  そのとき、隅で微睡んでいたワルキューレが急に鳴いた。 「それは誤解ですよ。我は警告に来たわけではない」  陰々とした声が湧いた。  その声に驚いて4人が一斉に振り向くと、いつの間に侵入したのか店の入口に黒い影がそびえていた。  それは青白い相貌に黒い司祭服の外道神父、ペイルライダーであった。
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