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やはりアオネさんの他に、八分儀さんもペイルライダーを調べていたのだ。
そんなことは歯牙にも掛けず、ペイルライダーがうすい唇を開いて問うた。
「それで何かわかったかね、日本の香師よ?」
「西洋には妖精の名をもつ香師が存在したと伝承で見つけました。その妖精の名はブラウニー──でも中世にその一族は、魔女狩りで滅んだと記録にあります」
「妖精……ブラウニー……」
独りごちるようにつぶやくと、八分儀さんがうなずくように説明する。
「北欧の伝説に“取り替えっ子チェンジリング”があります。これは妖精ブラウニーが人間の子どもを攫って、その子とそっくりな妖精と取り替えるのです。
ブラウニーに攫われた子どもは、妖精の世界で永遠の命を得て暮らすと云われていますね」
「それは……別の人格に変わる子どもと一緒ですねッ」
僕は驚きと共に、どこか浮き世離れしたワールデンブルグ症候群の相貌を見返した。
まさに神秘的な妖精の顔である。
「詳しく調べていますね。確かにブラウニーを名乗った一族は滅んでいます。我はその血脈にあらず」
「では、何者なのだ?」
今度はナギサが問うと、
「我は汝と相対する存在意義に生きる者」
ペイルライダーが前に言った言葉を繰り返した。
「バチカンが秘密文書保管所、その奥院にある秘匿文書保管庫で我は見つけたのだ。
それは神の大いなる秘密を封印したもの、この混沌とした世界にふさわしき欺瞞の書よ」
「それは何なのだ?」
「我はその封印を解いたから、十二の天使を生じさせ、混沌と冥府を支配する存在者となったのだ」
「それは何だ?」
「死送る者よ、この偽りの世界に生きる偽善者よ。いまだかつて何びとも耳にしたことのない秘密を汝に教えよう」
怒りを露わにするナギサを前に、ペイルライダーが両手を広げて天を仰いだ。
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