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アオネさんの言葉を聞いたが、その意味が呑みこめずに息が詰まった。
およそ信じられずに、何度も言葉を反芻させる。
それでも否定を振り切れず、力なく首を振った。
「……犬頭先生が……裏切り者?」
やっと喉を通った言葉だが、しかし掠れて消え入りそうだった。
「ああ。養子縁組の専門家として、子どもを亡くした政府高官や省庁関係者に里親斡旋していたのさ。
赤海アケミも犠牲者だとすると、これで11人目の魂器移植者になるね」
「そんな……あの優しい犬頭先生に限って……そんな馬鹿な……」
心が力ない否定の言葉を転がすが、頭が現実だと容赦なく責め苛む。
かくも世界は無慈悲なのだろうか。何もかも否定したい激しい衝動に駆られる。
なぜこの僕だけ、こんな残酷で理不尽な現実を突き付けられなければいけないのか。
「イサナ、しっかりしろ」
ナギサが短く叱咤する。
その凜として心震える声が、へたり込みそうになるのをかろうじて救った。
萎えた気力が戻ると同時に、最後に見た犬頭先生の姿を脳裡に再生させる。
その後ろ姿の傍らには、小さな少女が寄り添っていた。
「ナギサ……ユキナちゃんが……!?」
「ああ。ユキナが危ない」
ナギサの眼が怯えの色に染まっていた。
その様子を眺めていたアオネさんが訊ねる。
「どうやら12人目の犠牲者に心当たりがあるようだね?」
「ええ。犬頭先生が昨日連れだした子どもがいるんです」
「その子の居所はわかるかい?」
「待ってくださいッ」
僕は懐から1枚の名刺を取りだした。ユキナちゃんが住所を記したものである。
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