第3章 世界の涯てに泣く者と ─ ケース4 ─

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「相談所の犬頭というおじさんがうちに来ていたんだ。そのおじさんが母さんと相談していたのを見たんだよ」 「犬頭先生が……ッ!?」  頭を殴られたような衝撃で眼の前が真っ白になった。 (あの犬頭先生がなぜ黒葛原の家に……!?)  心が疑問をなぞるが、頭はすでに答えを用意していた。  その恐ろしい帰結ゆえに、臆病な心が受け入れられないのだ。 「ケンイチ、その犬頭の他に誰かいなかったか?」  ナギサが鋭い声で問うと、 「黒い服の外人さんがいたよ。顔は笑っていたけど怖い雰囲気だったから憶えているよ」  ケンイチ君は思い出したように言った。 「犬頭先生と……ペイルライダーが……!?」 「イサナ、すぐに探さないとマナミが危ないっ!」  急かすナギサに応えるように足を踏み出そうとすると、 「猫屋田イサナ、貴様どこに行くつもりだ?」  冬馬監査官の鋭利な声が背中を刺し貫いた。 「ど、どこって……マナミちゃんの身に危機が迫っているんですッ」 「貴様はすでに児童福祉司ではない。従って貴様が行く必然がどこにあるのか?」  微塵も揺るがぬ声だった。 (一刻の猶予もないが、このままでは埒が明かないッ)  僕は無視するように足を踏みだすと、その進路を冬馬監査官が立ち塞いだ。 「そこから一歩でも動けば、貴様を免職処分に断ずる」 「退いてください、僕は行かなければいけないんですッ」  ナギサとケンイチ君を前に、僕と冬馬監査官が睨み合うように対峙した。 「貴様はもう児童福祉司ではないんだぞ。なぜそこまでする必要があるのだ?」
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