第3章 世界の涯てに泣く者と ─ ケース4 ─

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「僕は児童福祉司の前に人間です。子どもを守るのは、法ではなく人の心です」 「どうしても命令に逆らうのなら、貴様がもつ公務員の資格も剥奪するぞ?」 「僕は構いません」  断固として進もうとした。  すると── 「猫屋田、よく言った!」  美蝶子さんの叫ぶ声が背中を打った。  僕の背後にいつの間にか、美蝶子さんや雉子さんが立っていた。  そればかりか、服部女史や辰鳥課長までいるではないか。  皆が一様に熱い眼をして僕を見ていた。 「猫屋田。ここはあたしたちに任せて、お前さんはお嬢ちゃんと行くんだよ」  美蝶子さんが強い声で言うと、冬馬監査官が遺憾に堪えない表情で首を振る。 「何をとち狂ったか……君たちまでこの男に感化されたのか?」 「ああ、存分に感化されたね。でもね、それはコイツが仲間だからさ。子どもの命を大事に思う仲間だからなんだよ」 「子どもや仲間と口にするが、すでに児童福祉司の資格を剥奪されたのだぞ」  冬馬監査官が焦れた声をだすと、 「ならば、あたしの資格を猫屋田に託すよ!」  美蝶子さんが強く叫ぶ。 「ならば、君の資格も剥奪するぞ」 「それならば、わたしの資格をあげます!」  今度は雉子さんが叫んだ。 「それならば、君も資格を剥奪するぞ」 「それで足りなければ、ここにいる全員の資格を託すわよ」  しまいには服部女史が言葉を繋げた。  みんなの言葉を聞いて、不覚にも眼の奥が熱くうずいた。  うるうると感情が湧いて、涙をあふれさせないようにするので精一杯だ。 「あくまでも恭順の意を示さないのだな。では、この部署を廃止に追い込むまでだ」  冬馬監査官がいささか鼻白みながら言うと、 「それは、この老いぼれの首で勘弁してください」
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