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ナギサがアオネさんの横の助手席に、僕とケンイチ君は後部座席に座った。
走りだしてすぐ、ケンイチ君に魂器移植の意味やマナミちゃんの危機を説明する。
「それじゃマナミの魂はどうなるのですか?」
「妹さんの身体から抜けて消えてしまうんだ」
「別人になるの?」
「ああ、元のマナミちゃんじゃなくなる」
「そんなっ……!?」
ケンイチ君が凍りつく間も、車はけたたましくエンジン音を響かせながら走る。
「それで13人目の犠牲者をどうやって探すんだい?」
アオネさんがハンドルを切りながら訊いた。
「このワルキューレが道案内をしてくれる」
ナギサが答えると、後ろを向いて目配せをする。
僕はケンイチ君が握る雛人形の首を渡した。
ワルキューレが鼻をヒクヒクさせながら人形の首を嗅ぐ。
すると赤い首輪に吊された鐘が、闇を嗅ぎつけたがごとく鳴り始めた。
「ほほう、猫が道案内とは洒落てるじゃないかっ」
「アンジェラスの弔鐘が報せてくれるのだ」
鐘の音が鳴る方向に向かって、車が地を這うように疾走する。
街を走り抜けた車は、やがて深い森の奥に鎮座する教会に着いた。
淡い黄色の壁と白い漆喰の装飾がある、天を衝くように荘厳で豪奢な教会である。
重厚な彫りのある大きな扉を開けると、正面の至聖所に白亜の段をなす祭壇があり、赤い灯りが仄かに揺らめいていた。
至聖所の上に祀られているのは、濃い色彩で飾られた聖母マリアと幼子イエスの母子像である。
聖堂に燈された蝋燭の光、打たれる鐘の音、グレゴリオ聖歌のような祈りの声、炉儀による振り香炉の煙り。
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