第3章 世界の涯てに泣く者と ─ ケース4 ─

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「ナギサ、どうするんだい!?」 「今なら間に合う。マナミの魂を元の器に戻すぞ」  焔に貌を照らされたナギサが歩を進めようとすると、 「みすみす見逃すと思っているのか」  赤い灯りで相貌が陰るペイルライダーは祭壇の前に立ちはだかる。  突如として影差すように陽が隠れ、ステンドグラスを突風が叩きだした。  遠くから低く唸るような雷鳴が、徐々にこの教会に近づいてくるのを感じる。 「嵐が迫って来るよ」  後ろに控えるアオネさんが言った。  パッシャッ!!  突然、雷鳴が轟き鳴る。 「ひいっ!?」  稲妻が教会を裂いたかと、短い悲鳴がこだまする。  まるで雷光が実体化したように、ペイルライダーの前に3体の異形が現れた。  それはおよそ尋常な人の姿形に非ず。冥界から召喚された魔人であろうか。  中世の西洋甲冑に身を包み、嘶き荒ぶる盲目の馬にまたがる騎士。  各々が相違した色相で、馬ばかりか全身を染めていた。 「我が僕なる黙示録の三騎士である」  ペイルライダーが厳めしく告げる。  黙示録の三騎士と呼ばれた異形──白・赤・黒と三色に身を染める冥府魔道の御使いであった。  甲冑の兜に隠れて相貌は窺い知れぬが、眼の位置にある隙間から茫とした凶光が覗いている。  その甲冑は毒蟲や禍蛇の禍々しい文様が彫られ、無機質なはずの鎧表面がぞわぞわと蠢いているではないか。 「“暴力”を司るホワイトライダー」  白馬にまたがる白色甲冑の騎士は、その手に弓を携えていた。 「“不信”を司るレッドライダー」  赤馬にまたがる赤色甲冑の騎士は、その手に大剣を翳していた。
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