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「“飢餓”を司るブラックライダー」
黒馬にまたがる黒色甲冑の騎士は、その手に天秤を提げていた。
「そして“死と退廃”を司る、我がペイルライダーを併せて黙示録の四騎士なり」
青白い相貌をした黒衣の異端者が高らかに名乗る。
「そしてこれがユダの死海写本に記された、ナルドの香油を調合した“ラダマンテュスの振り香炉”である」
仄かに烟る振り香炉を持ち、おもむろに三騎士の背後に立つ。
(暴力と不信と飢餓、それに死と退廃って……)
まるで児童虐待のようだと思った。
けだし世界の秩序に混沌をもたらす、封印から解き放たれた終末の御使いである。
「この幼子の魂は我が所有物なり」
「マナミの魂は必ず取り戻してみせる」
ペイルライダーとナギサが、三騎士をはさんで対峙した。
ナギサが両の掌に燭香を灯し、僕に向かって振り返らずに叫ぶ。
「イサナ、私はこれより肉体を抜け霊体となって闘う。その間にマナミの魂を呼び寄せてくれ」
「そんなことをして大丈夫なのかい?」
「私は助死師──死番の助死師だから、必ず帰ってくる」
「信じてるよッ!」
強く呼び掛けると、ナギサが一瞬だけ横顔を見せる。
これから死地に向かうといのに、その表情は穏やかで美しかった。
僕はその貌を一生忘れないだろう。
「行くぞ!」
ナギサが叫んだ。
その叫びに呼応して、ワルキューレが九尾を立て吼えた。
両掌にあるエリュシオンの燭香を打ち合わせると、2つの焔が弾けて大きな火焔になる。
火焔が明るく教会を照らすと、ナギサの身体から白い霊体が抜けでた。
ナギサの白い霊体と霊猫ワルキューレ、それを威嚇するように三騎士の馬が高く嘶く。
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