第3章 世界の涯てに泣く者と ─ ケース4 ─

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 教会の中央でぶつかり合う両雄──その超常の戦闘に上空の暗雲も逆巻くように狂風を吹きつけた。  両掌の焔を自在に操るナギサ、黒い颶風と化して跳躍するワルキューレ。  その手にした弓を、大剣を、秤を武器に乱れ撃つ三騎士。  凄まじい霊体の衝突で、教会内に激しい閃光が瞬いた。  その間隙を縫って、僕とケンイチ君はマナミちゃんの魂を探した。 「マナミ──! マナミ──!」  ケンイチ君が妹を求めて叫ぶ。  すると戦闘で空間に軋轢が生じたのか、宙に霧が濃く靄る空間が現れる。  その霧巻く空間の向こうに、背中を向けて少女が泣く姿が見えた。 「おにいちゃん、どこなの? 暗いよ、怖いよ」  マナミちゃんが泣きながら訴えていた。 「マナミが、マナミが喋っている!?」  眼を閉じ手を合わせていた美紀さんが驚きの声をあげた。 「魂となったマナミちゃんは、肉体の障害から解き放たれたんです。あれが本当のマナミちゃんですよ」 「マナミ──! お母さんはここよ!!」 「どこなの? 暗くて見えないよ」  美紀さんが必死に呼ぶが、異空間のマナミちゃんは泣きじゃくるばかりである。  そうしている間にも、ナギサが三騎士に押されてジリジリと後退していた。  数で負けるナギサが不利なのは明白である。  ワルキューレは蹴散らされて、ナギサも膝を屈しようとしていた。 「くぅ……っ」  勝利を確信した三騎士が、ナギサにとどめを刺さんとにじり寄る。  三騎士が一斉に武器を振り上げた。万事休すか──!? 「ナギサッ──!!」  思わず叫んだ。  その瞬間、叫びに応えるように3つの光球が出現した。  その光球がナギサを護るように、三騎士の前に盾となって立ちはだかる。  瞬く間に光明が薄れて、光球が人の姿に変じた。
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