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それと同時に、黄金色に燃える3人の助っ人も霞むように消えた。
ペイルライダーとの死闘は終結したが、まだマナミちゃんが戻っていなかった。
「おにいちゃん、どこなの? 暗いよ、怖いよ」
「マナミ──! マナミ──!」
美紀さんとケンイチ君が呼べど叫べど、異空間にいるマナミちゃんに通じない。
焦れる僕の前に、ナギサの霊体が飛来して告げる。
「もう時間がない。あそこからマナミを連れ戻してくる」
言われて見ると、エリュシオンの燭香があとわずかしか残っていない。
「間に合うのかい?」
「イサナが約束しただろう、絶対に救うと。私はそれを叶えてみせる」
ナギサが凜として言った。
けれども、その貌は前を向いたままで、決して僕を見ようとしない。
「ナギサ……」
「行くぞ!」
言い掛けた言葉を遮るように、ナギサが身を躍らせて異空間に飛びこんだ。
霧烟る空間は光なく迷暗で、ナギサが闇間を掻き分けるように泳ぐ。
背を向け泣きじゃくるマナミちゃんに辿り着くと、その頭を撫でながら教える。
「マナミの大切な家族が向こうで待っている。もう帰ろうな」
子守歌のように優しい声音に、マナミちゃんが泣き止み顔を上げた。
「家族……?」
「ああ。マナミのお母さんとお兄ちゃんだよ」
ナギサが幼子をあやす母親のように言う。
僕はその眼を見て、やっと悟った。
あれは母が養護施設から来た自分に向けた、慈愛と母性に満ちた眼の色であった。
それを思い出して、胸が沁みるように温かくなる。
「ごめんなさい許して、帰ってきてお願いだから。母さん、マナミを愛してる!」
美紀さんが叫んだ。
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