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「あの半分破れた絵本、私が続きを描くと決めた」
「ナギサが絵本を……」
「私が忘れた想いを、描いた絵本を読んで想い出してくれる。私が無くした心を、きっと誰かが育んでくれる。
そう思って、絵本を描くと決めた」
「うん。ナギサの描いた絵本、僕も見たいな」
しみじみとそう思う。
するとナギサが、はにかんだように初めて笑った。
それは心奪われる、無垢の笑顔だった。
僕は懐に入れておいた辞表を、そっと破ってポケットにしまった。
──第1章 死送る者のレゾンデートル 終。
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