第2章 死骸とネコと、半心の悪魔 ─ ケース2 ─

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 気の利いた慰めの言葉を探したが、もとより不器用な自分に浮かぶはずがない。  ナギサの視線の先には、大きなケヤキが陽の光を浴びて緑を揺らしていた。  その下で日陰を求めるように、年老いた夫婦が手を繋いでくつろいでいる。  何だかとっても良い感じで、そこだけ時間の流れがゆるやかに見えた。 「そうだッ、大事な人のことを思い浮かべれば描けると思うよ」  思いついたことを口にすると、ナギサがスクッと立ち上がった。 「大事な人で思い出した」 「えっ、何を?」 「もう行かなくてはいけない」  そう言い捨てると、スタスタと歩き始めた。 「ち、ちょっと待ってよ!」  いきなりの言動にあたふたしながらも、わき目も振らず歩くナギサの後を追う。  やがて、公園近くにある一軒の店の前で止まった。  薄い青磁色をした外観の小さな店舗で、窓から覗く内部は木造りである。  こんなところに店があるとは知らなかった。  まるでアンティークショップに見えるが、家具や骨董の類いは並んでいない。  看板に『香処 卦限儀』とある。  何て書いてあるんだろうと看板を見上げていると、ふいにナギサが振り向いた。 「ここまで付いてきて何の用だ?」 「えっ、何の用って……」  また訊かれた。興味本位で来たとは言えない。答えに窮していると、 「ナギサ、お客さんかい?」  店の扉が開いて、男の人が顔を覗かせた。  亜麻色の髪を後ろで結び、眼鏡がよく似合う優しく甘い笑顔だ。  それをたとえるなら、ナギサが苦いファーストフラッシュのダージリン紅茶なら、男の人は甘いホットチョコラテであろうか。
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