第2章 死骸とネコと、半心の悪魔 ─ ケース2 ─

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「イサナすまないが、そのミヤビの許に案内してくれ」  ナギサが決然とした声で言った。 「それは構わないけれど、どうするつもりなの?」 「そのミヤビに憑いている霊を死送る」  そう言うやいなや、ワルキューレにリードを結び身支度を始めた。  その様子に八分儀さんも肩をすくめている。どうやら言い出したら聞かない性格らしい。 (これは昼休み中に相談所に戻れないぞ)  美蝶子さんに携帯で電話しても繋がらない。  仕方がないので辰鳥課長に、ちょっと遅くなる旨の連絡をする。  雉子さんに午後の連絡を任せると、「驕りですからね」と駄々をこねられた。  僕がシドロモドロで電話している間に、 「イサナ、早くしろ」  ナギサが用意を終えて急かしている。ワルキューレも「みゃ」とせき立てた。 「で、ではナギサをお借りします」  アタフタと挨拶して店を出る。 「ナギサのことヨロシクね」  八分儀さんが慣れた様子で手を振っている。これが日常茶飯事らしい。  そして僕は、ナギサと共に養護施設に向かった。  背広姿の僕と、ゴスロリの服を着たナギサ。通行人が怪訝な眼で眺めている。  けれどナギサは意に介さない。黒猫のワルキューレを抱いて、黙って後ろに付いてくる。  養護施設の近くまで来ると、いきなり携帯が鳴った。  誰かと思ったら、美蝶子さんの着信である。 「こぉら猫屋田、今どこにいるんだっ!」  通話ボタンを押すと、いきなり叱られた。 「えっ! どこ!? えーと、ちょっと気になることがあって養護施設に向かっています」 「それで、お前さん1人なのかい?」 「えっ、あ、当たり前じゃないですかッ」 「あっそ!」  シドロモドロで言い訳すると、プツリと通話が切れる。  やっと養護施設が見えてきたと思ったら、腕を組み仁王立ちする美蝶子さんが見えた。
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