第2章 死骸とネコと、半心の悪魔 ─ ケース3 ─

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第2章 死骸とネコと、半心の悪魔 ─ ケース3 ─

 次の日。相談所に出勤すると、事務所の前で美蝶子さんが待ち構えていたように手招きした。 「美蝶子先輩、おはようございます」  僕は挨拶するも、わずかに目を背ける。  どうやら言いづらいことらしい。一体どうしたのだろうか。 「猫屋田、昨日はすまなかったね」  珍しくへりくだった物言いだ。 「いえ、美蝶子さん。自分も後先考えずに行動してしまいましたから」 「彼女……傷ついたかしら?」 「僕も気にしているのですが、あの後にお店に行ったけどナギサはいなかったんですよ」 「そうか。あたし言い過ぎたかな……」  美蝶子さんが憂いに満ちた眼でつぶやいた。  昨夜は相当に悩んだらしく、眼の下にうっすらと隈が見える。おそらく寝ていないのだろう。 「でも幽霊とか超常現象なんて、あたしは絶対に認めないからね!」  思い直したようにズバッと言った。あくまで信念は曲げないらしい。 「それでこそ美蝶子さんです」  僕はプッと吹き出すと、 「仔猫のくせに生意気だよ。さあ、仕事だ」  美蝶子さんが手にしたファイルで叩いた。  午後になりH票をKIシステムに保存していると、美蝶子さんが書類書きの途中で頭を上げる。 「猫屋田、この後に空いている時間あるかい?」 「もう面接はありませんから時間取れますが」 「それじゃ例の赤海さんの家庭訪問、1人で先に行ってくれないかな。 これから出掛けるけど他もあるから、時間に間に合いそうにないのよね」  赤海さんと聞いて、真っ先に顔半分が違う姿が脳裡に浮かんだ。  それにヒステリックな叫び声が鼓膜で再生する。
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