第2章 死骸とネコと、半心の悪魔 ─ ケース3 ─

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「ママはいつも留守にしがちで、今も出掛けています。妹は……」  アエカちゃんが言葉を濁らせ表情を曇らせる。 「妹さんのアケミちゃん、どうしたのかな?」  自転車から降りて訊くと、さらに表情を硬くしてうつむいてしまった。  この聡明で素直な少女が、これほど言いづらそうにしているのは只事ではない。  よほど深刻な事情があるに違いない。 「アエカちゃん、妹さんに何かあったのかな?」  怯えさせないように努めて冷静に訊ねた。 「猫屋田さん……許してください」  アエカちゃんが顔を上げる。その大きな眼にはうっすらと涙が溜まっていた。 「ど、どうしたの!?」  僕は声を荒げて訊いてしまった。 「……猫屋田さんに嘘をついていました」  アエカちゃんが涙をこぼさないようにしながら告げた。 「僕に嘘を……?」 「はい。ママの前では言えませんでした。だって、ママがすごく怒るからです」 「理恵花さんが怒るって、何かいけないことをしたのかな?」 「いけないことをしたのは、このわたしです」 「アエカちゃんが……いけないこと?」 「はい。猫屋田さんがこの前うちに来たときに、妹のアケミがいましたよね?」 「うん。アエカちゃんが呼んでくれて、僕はアケミちゃんに会ったよ」 「ごめんなさい。わたしは嘘をついていました。あれはアケミではありません」 「アエカちゃんが嘘……アケミちゃんじゃない……?」  僕は頭が混乱して思考がぶつ切りになった。 「あのアケミは、わたしが演じていたんです。アケミには何日も会っていません」 「ど、どういうことなのッ!?」 「ママがアケミを閉じこめているんです。猫屋田さん、助けてください!」  アエカちゃんが大粒の涙をこぼして叫んだ。
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