第2章 死骸とネコと、半心の悪魔 ─ ケース3 ─

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「ミヤビちゃんはパニックを起こしているだけです。 いくら相談所の児童福祉司でも、いきなり押しかけてくるなんて越権行為ではありませんか」 「いや、僕はミヤビちゃんが心配で、それで急いで来たのです」 「その女性は部外者ではありませんか。いくら何でも常識がなさ過ぎじゃないですかっ」  保育士の語気が荒くなってきた。やはり非常識に映るのだろう。 「信じて、ユキナは嘘をついていないよ!」  ユキナちゃんが必死に訴えるが、 「もうお引き取りください。施設のスタッフが責任持って、ミヤビちゃんを守りますので」  保育士は事務的な対応で僕たちを追い払おうとする。 「退いてくれ。私はミヤビを助けに来たのだ」  ナギサが強い口調でズイッと前に進むと、 「ちょっ待っ、非常識過ぎますよっ!」  保育士は目を白黒させて制止した。  さすがに強引過ぎるかと二の足を踏んでいると、 「通してあげてくださいな」  突然として声が湧いた。  声に釣られて振り向くと、そこに長田所長がいた。 「非常時には非常手段ですよ。この事態は我々では手に負えないですから」 「けれど所長、そんな横暴が──」 「私の権限で彼らを許可します。ですから、ここは私に任せてくれませんか」  長田所長が穏やかな口調で、激昂する保育士をいなした。 「それにしても、イサナ君は良い児童福祉司になった。そして──」  長田所長が言葉の途中でナギサを見た。 「そしてナギサ君も、あれから随分と経ちますが立派になりましたね」 「長田所長はナギサを知っているのですかッ?」  僕は驚いて声をあげると、 「知っていますとも。ナギサ君はこの施設で育ったのですからね」  大きくなった子どもを喜ぶように、長田所長が眼を細めながら答えた。
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