さよならは突然に

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 だが、そんな俺の思いも届くことはなく、彼女の送別会が開かれることになった。  他のやつらが歌やパフォーマンスで盛り上がるなか、俺は一人静かに食べていた。とてもじゃないが、バカ騒ぎする気分ではなかった。  ふと、誰かが隣に座った。チラリと横目で見ると、彼女だった。 「ねえ、まだ怒ってるの?」 「えっ?」 「なんか、楽しそうじゃないし……」  彼女はちょっと複雑な表情をした。無表情で黙々と食べている俺を見て、『怒っている』と思ったらしい。  俺は首を横に振り言った。 「違うよ。ただ……」 「ただ?」 「別れの会で、楽しそうにはしてられないだけ」  嘘じゃない。  本当に彼女が抜けてしまうのがショックで、楽しめる気分ではなかったのだ。  だから、一人黙々と食べることで、その現実から逃げていた。  少しの間があってから、彼女が「そっか」と言った。 「私、嫌われちゃったのかと思ってた」 「嫌いになんかならないよ!」  そう、むしろ『好き』という気持ちが強くなった。 「ちょっと、話があるんだけど」 「なに?」 「ここじゃあ、ちょっと……」  俺達は、未だに盛り上がるメンバーを横目に、こっそり部屋を抜け出した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加