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だが、そんな俺の思いも届くことはなく、彼女の送別会が開かれることになった。
他のやつらが歌やパフォーマンスで盛り上がるなか、俺は一人静かに食べていた。とてもじゃないが、バカ騒ぎする気分ではなかった。
ふと、誰かが隣に座った。チラリと横目で見ると、彼女だった。
「ねえ、まだ怒ってるの?」
「えっ?」
「なんか、楽しそうじゃないし……」
彼女はちょっと複雑な表情をした。無表情で黙々と食べている俺を見て、『怒っている』と思ったらしい。
俺は首を横に振り言った。
「違うよ。ただ……」
「ただ?」
「別れの会で、楽しそうにはしてられないだけ」
嘘じゃない。
本当に彼女が抜けてしまうのがショックで、楽しめる気分ではなかったのだ。
だから、一人黙々と食べることで、その現実から逃げていた。
少しの間があってから、彼女が「そっか」と言った。
「私、嫌われちゃったのかと思ってた」
「嫌いになんかならないよ!」
そう、むしろ『好き』という気持ちが強くなった。
「ちょっと、話があるんだけど」
「なに?」
「ここじゃあ、ちょっと……」
俺達は、未だに盛り上がるメンバーを横目に、こっそり部屋を抜け出した。
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