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「シェリルさえ嫌じゃなかったら、着けてもらいたいって…俺のわがまま、か」
「そうじゃなくて、だって、お母様の形見でしょう?恐れ多いって言うか…」
「誰にも着けてもらえず、仕舞いっぱなしの方が可哀想だろ」
アルトにそう言われて、そっと指輪のケースを受け取る。
「良いの?私が着けても」
「その方が母さんも喜ぶだろうって。初めてかもしれない。親父と意見が一致するの」
そう言いながらアルトがシェリルの右手を取り薬指に指輪を嵌めるも、緩くてスルっと回ってしまった。
「手袋すればちょうどかな」
きっとそれも計算の上だったのだろう、アルトの嬉しそうな声にシェリルは胸がいっぱいになってきて、目頭が熱くなる。
「…もう、アルトの癖に!」
「うん」
アルトがシェリルを抱き寄せて、優しく宥めるように頭を撫でる。
「まだ泣くのは早いだろ?」
「泣いてないわよ!」
いつもの調子で返すシェリルが愛しくて、アルトはシェリルの顔を覗き込んで指で涙を拭う。
そして見つめあってから、ゆっくりと口付けを交わす。
「シェリル…愛してる」
先程照れて言えなかった言葉を耳元で囁くと、シェリルは何度も頷いてアルトの背中に回した腕に力を込めた。
END
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