誰にも言えない私だけの秘密

3/7
55人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「しかも、立波さん。おめでたダブルですね」  彼女の言葉が何を言っているのか分からなかったが、次の言葉で私は凍り付いた。 「ほら、ここ。ここにも胎嚢があるでしょう?」  再び丸印がつけられる。 「二つあるということは二人、お腹の中にいるってことなの。一卵性の場合は胎嚢が一つだけで、今の段階ではまだわからないから、立波さんのお子さんは二卵性の双子ね」 「ふた……ご……」  唇を震わせて呟く私を見て、一人でも大変なのに、一度に二人も出産するということに不安を感じているのだと思ったのだろう。 「大丈夫ですよ。双子妊娠は喜び二倍、不安は四倍とよく言いますが、わたくしたちもしっかりとサポートしていきますから。元気な赤ちゃんを産みましょう」  励ましてくれる女医の言葉は既に聞こえなかった。  あれから、一体、どうやって診察台を降り、どうやって帰宅したのかも分からないけれど、喜びに満ちた妊婦の顔ではなかったと思う。  ときおり耳に入る心配そうな声は看護士のものなのか、それとも電車に乗っている時に、顔色の悪い私を心配した見知らぬ方のものなのかは定かではない。  とりあえず、なんとか無事に家には辿り着いた。  仕事から帰って来た夫に妊娠の報告をすると、物凄く喜んでくれたことで、ようやく正気を取り戻すことが出来た。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!