誰にも言えない私だけの秘密

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「おめでとうございます。4週目ですね」  清潔そうな白衣に身を包んだ女医が穏やかな笑顔を浮かべてお祝いの言葉を伝えてくれた。  あぁ。  このお腹の中に大切な我が子が宿っているんだ。  まだ悪阻もなく、お腹もペタンコなだけに、中々実感が沸いてこないけれど、それでも先生の一言で、ここに夫と私の愛の結晶がいるのだと思うと、ジンっと胸に温かいものが込み上げて来る。  女医はモニター画面にエコーの画像を映しながら、柔らかな口調で話を続ける。 「ほら。ここ。ここに小さな黒い点があるでしょう? これが胎嚢……つまり、子宮内膜に受精卵が着床することによって作られる赤ちゃんを包んでいる袋なの」  診察台の上からモニターを見上げると、小さな黒い点の部分にマルがつけられた。  こうやって視覚的に教えられると、なんとも感慨深い。  目頭が熱くなり、ジワリと涙が溢れ出て来る。  こういうのが幸せを噛みしめるっていうやつなのかなぁと思っていると、聖母のような微笑みを湛えた女医が、今度は私を奈落の底へと突き落とした。
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