第一章:屋上にぶら下がる

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流石に引かれてしまったかな。と思いたい気持ちがあるものの、彼女の目は決して尾行してきたことに対して気持ち悪がるような視線ではなく、まるで……その視線は捕食者が襲うべきか否か判別しているような目つきだ。 僕は未だに緊張した気持ちが離れずに落ち着くなく視線を泳がせる。今にも泣きたい気分でいっぱいだ。 佐藤さんの冷たい視線が目に入り、僕はまた僕は固まる。息をするのも苦しい。ジリジリと近づくように佐藤さんは僕の目の前にやってきた。石鹸の匂いが少し強くなった気がする。 梅雨の湿った空気以上に嫌な汗が体中から溢れてくるのを感じる。目を逸らしたら殺されるかもしれない。そんなあり得ない恐怖に僕は硬直していた。 そんな僕を見て彼女は氷のような冷たく微笑んむ。そして、よく解らないことを言い始めた。 「しばらく待っていてくれないかな。あの死体にこの遺書を入れておかないと」
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