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夕暮れが町を染める。一日の終わりの何処となく弛緩した空気が漂う時間。
そんな学校帰りの学生や仕事を終えた人々の姿を山崎正親は、カメラにおさめていた。
ちなみに正親自身も学校帰りの高校生で、写真撮影はただの趣味である。使用しているのは小型のデジタル式のトイカメラだ。
別に写真部に所属しているわけではない。そもそも正親は自分の通う学校に写真部があるのかすら知らないのだ。
このカメラも正親の兄が買ったが、飽きて使わなくなったのを貰っただけで、おそらく正親もしばらく使えば飽きてしまうだろう。
なんにしても、今の正親の中では写真撮影が楽しいのだった。友人達や学校の何気ない風景を、撮っては眺める。
この日も学校帰りに駅の風景を写していたわけだが、撮影の瞬間におかしなものが見えた。
あれ?、と小さな声が出た。慌てて確認するが、なんの変哲もない夕暮れに染まった駅舎だけが写っていた。
軽く首を捻る。
シャッターを押す瞬間、撮影画面に黒いモヤのようなものが、駅舎に這うようにうつりこんでいたように見えたのだ。
どうやら気のせいだったか、と思い直した時、
「こいつはまた…派手にたかってやがる」
そう聞こえた。
後
ろを見やると青年、いや少年がいた。
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