#04. SHOW ME THE WAY

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───── 「河合さんは、いつからユウちゃんに目を付けていたんですか?」  渋谷の居酒屋での県立名取橋西高校プチOB会は続いている。  真樹も沙織も、そして中退こそしたものの、優司も素能子の手によって城南大学へ送り込まれたことを知っての、ヤスヲの発言だ。 「そうねぇ…… 放送の録音テープは定期的にもらって聴いていたのだけど。ホラ、私西高にスパイを送り込んでいたじゃない?」 「それって佐知子ちゃんのこと?」 「そうよ」 「スパイって……」 「随分と佐知子と仲良くしてくれていたみたいじゃない?ユウちゃん」 「なんスか、その語弊のある言い方。1年の時に同じクラスで、3年の時にバンドのステージを手伝ってもらっただけじゃない」 「本当にそれだけ?…… まぁ、いいわ。佐知子からね、ユウちゃんの人格についても聞いていたから。  もう、ユウちゃんが1年生の時には引き抜こうと思っていたかなぁ…… 佐知子に感謝しなさい、ユウちゃん」 「へ~い」  ん?河合さんの妹さんで、名前がサチコ…… 「ねえ、そのサチコって……」  そう。ヤスヲだけが素能子の妹、佐知子のことを知らないのである。 「そうですよ、ヤスヲさん。モデルの河合佐知子」 「最近はねぇ、映画とかドラマとかにも出るようになっちゃって、生意気に。  私なんか取引先とかスポンサーのかたとか、たまに局内の人間からもサインをくれ、って言われるのよ!」 「ははは…… サッちゃん、人気者だから」 「待って、待って、待って!あの河合佐知子が河合さんの妹さんで、同じ西高の卒業生で、ユウちゃんのクラスメイトで、ユウちゃんのバンドを手伝ってた?…… 手伝ってた。って、何?」 「あぁ…… バイオリンを弾いてもらっていたんですよ」 「うわ…… 俺、ちょっと前のサリーちゃん状態になってる。河合佐知子がバイオリン?」 「そう。超上手いんだよ。新譜の飲み込みも早いし」 「あ…… ボトル空いちゃったぁ。ね、2軒目行きましょ」  素能子の言葉を合図に、全員が帰り支度を始めた。 (#04. SHOW ME THE WAY 終) (No Fake -rewrite-【1:高校編】 完)
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