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優司と違い、インナーイヤータイプのイヤフォンを愛用している真樹は、そのままでも比較的外の声が入って来やすい。
事前打合せに参加できない優司は、このようなタイミングに番組の構成、トークの内容などを真樹から聞いているのだ。
そして絶対に外に聞かれてはマズい話も……
「私達を誰だと思っているのよね。ユウちゃんがちょっと遅刻したくらいで今さら慌てないっつーの」
「そだよね。ありがと。先輩が教えてくれた秘密の道程のお陰だよ」
「今日のゲスト、ヤスヲさんよ」
「ね。サリーが知ったら卒倒するだろうね」
その後番組は順調に進み、ゲストを迎えるコーナーになった。
斎藤
「ジャム・ジャム・ジャンクション、ゲストをお迎えしております」
富田
「デビューシングルが大好評の、石川ヤスヲさんでーす!」
優司と真樹は、優司の隣── ゲストの指定席に座っているヤスヲに向けて両手でキラキラポーズを作る。
石川
「どうも…初めまして。よろしくお願いします」
若者の域は脱していないものの、ヤスヲは優司よりは少し歳上に見える。
3方がガラス張りで外に面しているスタジオのために街行く人達の視線も多く、少し緊張しているようだ。
斎藤
「石川さんと言えば、ねぇ」
富田
「ええ。ロックバンド、ETERNAL TIMESのボーカル、名取橋崇志さんのソロツアーでベースを担当して、それがきっかけでデビューに至ったとお聞きしていますが」
斎藤
「ナットさんのツアーメンバーに選ばれたきっかけ…ってなんだったんですか?」
石川
「ええ。ジャズバーで働きながら、ベーシストとしてそこのステージで演奏していたところをETの事務所の社長に声を掛けていただきまして。
ナットさんはソロツアーでズ太いサウンドを目指していたので。それが縁でトントン拍子でツアーメンバーに起用されました」
富田
「うわ。とんだシンデレラボーイじゃないですか!」
斎藤
「そこからデビューに至るまでって、どんな感じだったんですか?」
石川
「ナットさんのツアー中、メンバーやスタッフなんかで、よくカラオケに行きまして」
富田
「ナットさんも行くんですか?」
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