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石川
「ええ…あー、言っちゃっていいのかな、こんなコト。よく歌いますよ、ETの曲も」
斎藤
「うそ!?」
富田
「意外!」
石川
「俺の歌をナットさんがえらく気に入りまして。で、よくリハーサルで歌わされてたんですよ。気が乗らね~。って言って」
斎藤
「カラオケでは歌うのに、ご自身のリハーサルでは歌わないんですか?」
富田
「あぁ…ETのイメージがぁ…」
ETERNAL TIMESは日本のロック界に君臨する伝説のロックバンドである。
70年代にアメリカンロックの流れを汲む凄腕のミュージシャンが集結し、80年代に新たなサウンドのハードロックバンドとしてデビュー。
その後は楽曲のセールス、ライブの動員ともに驚異的な記録を樹立。
近年はデジタルサウンドも取り入れて新たな境地に入ったが、昨年突然活動を休止。メンバー個々がソロ活動を始めたばかりだ。
活動中、露出は音楽雑誌のみ。テレビの音楽番組などにはまったく出演しないため、動く本人達を見るにはライブに足を運ばなければならなかった。
当然、メンバーの性格やプライベートなどを、一般のファンが知る由もない。
石川
「そんなこんなで、ベース弾き語りっていいじゃん。みたいな流れから、ナットさんがデビューを推してくれまして」
富田
「すげぇ…ナットさんが、ですか?」
石川
「なんか、ナトリバシって名前に縁があるみたいですね、俺。出身も名取橋ですし」
「「………」」
ヤスヲの発言に、顔を見合わせて黙ってしまう優司と真樹。
石川
「あれ?俺、なんかヘンなこと言いました?」
富田
「いえいえ…失礼しました」
斎藤
「ちなみに…ご出身の高校とか、どちらなんですか?」
石川
「え?…高校…ですか?」
ヤスヲとの打合せは真樹とディレクターが事前に実施しており、問答の流れなどはおおよそ決められているものなのだが。
真樹が打合せにない質問をぶつけて来たために、ヤスヲは戸惑ってしまう。
富田
「あぁ…いいんですよ、仰りたくなければ。でも、ねぇ。どうせこの電波、名取橋まで届いていないし」
嘘。感度の良いチューナーであれば、なんとか拾えます。
石川
「あはは…特に後ろめたい過去があるわけでもないので。西高です。県立の」
「「えーーーーーーーっ!!!!」」
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