#01. FREE STYLE

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石川 「ええ…あー、言っちゃっていいのかな、こんなコト。よく歌いますよ、ETの曲も」 斎藤 「うそ!?」 富田 「意外!」 石川 「俺の歌をナットさんがえらく気に入りまして。で、よくリハーサルで歌わされてたんですよ。気が乗らね~。って言って」 斎藤 「カラオケでは歌うのに、ご自身のリハーサルでは歌わないんですか?」 富田 「あぁ…ETのイメージがぁ…」  ETERNAL TIMESは日本のロック界に君臨する伝説のロックバンドである。  70年代にアメリカンロックの流れを汲む凄腕のミュージシャンが集結し、80年代に新たなサウンドのハードロックバンドとしてデビュー。  その後は楽曲のセールス、ライブの動員ともに驚異的な記録を樹立。  近年はデジタルサウンドも取り入れて新たな境地に入ったが、昨年突然活動を休止。メンバー個々がソロ活動を始めたばかりだ。  活動中、露出は音楽雑誌のみ。テレビの音楽番組などにはまったく出演しないため、動く本人達を見るにはライブに足を運ばなければならなかった。  当然、メンバーの性格やプライベートなどを、一般のファンが知る由もない。 石川 「そんなこんなで、ベース弾き語りっていいじゃん。みたいな流れから、ナットさんがデビューを()してくれまして」 富田 「すげぇ…ナットさんが、ですか?」 石川 「なんか、って名前に縁があるみたいですね、俺。出身も名取橋ですし」 「「………」」  ヤスヲの発言に、顔を見合わせて黙ってしまう優司と真樹。 石川 「あれ?俺、なんかヘンなこと言いました?」 富田 「いえいえ…失礼しました」 斎藤 「ちなみに…ご出身の高校とか、どちらなんですか?」 石川 「え?…高校…ですか?」  ヤスヲとの打合せは真樹とディレクターが事前に実施しており、問答の流れなどはおおよそ決められているものなのだが。  真樹が打合せにない質問をぶつけて来たために、ヤスヲは戸惑ってしまう。 富田 「あぁ…いいんですよ、仰りたくなければ。でも、ねぇ。どうせこの電波、名取橋まで届いていないし」  嘘。感度の良いチューナーであれば、なんとか拾えます。 石川 「あはは…特に後ろめたい過去があるわけでもないので。西高です。県立の」 「「えーーーーーーーっ!!!!」」
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