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#03. DON'T BE AFRAID
「ビッグバンドかぁ…… やるなぁ、ユウちゃん」
渋谷の居酒屋。素能子が入れたボトル── 芋焼酎を飲みながら、優司とヤスヲの音楽談義が続いている。
と、言うより。ほぼ一方的に優司が高校時代の思い出話をしているのだが。真樹は優司が話すその様子を、黙って頬杖をつきながら聞いている。
席を立っていた素能子が席に戻って来た。店に入った時から気になっていたこと。
素能子、真樹、ヤスヲ、そして優司の4人の他に、まだ誰か来るのではないか?
4人だったら4人掛けの席でいいはず。それなのに素能子は、わざわざもっと大きな席を指定した。もしかして素能子ちゃん……
「いたいた!ごめんなさい…… 遅くなってしまって」
優司達が陣取るテーブルに、黒いストレートロングの女性が現れた。ちょっと気が強そうな、キリッとした顔立ちのお嬢様のような女性。
「遅い!サリー。心配して電話掛けに行っちゃったじゃない」
着席を促しながら、頬を膨らます素能子。酔っているのだろうか。
「ごめんなさい素能子ちゃん。服を選んでいたら家を出るのが遅くなってしまって」
空席に座りながら現れた女性── 優司の1学年下である田嶋沙織が言う。沙織は大学4年生。
去年までは現役女子大生DJとしてFMジャンクションで夕方の短い生放送番組を担当していたが、卒業を控えた今は活動を自粛している。
「にしては、こんな昭和初期の小学生みたいな格好?」
「そそ。渋谷って聞いたから。この格好で睨み効かせれば、怖いお兄さん達も酔っ払いも近付いて来ないから」
「なるほど。近寄りたくない」
「なんですって!?」
優司の発言に、殴り掛かろうと拳を挙げる沙織。そんなやり取りを見てクスクスと笑い出す真樹。その様子に沙織は我に返ったようである。
「あ…… ごめんなさい」
ようやく初対面の者がいることに気付いたようである。
「今日のジャムジャム、聴いていなかったの?サリー」
素能子の問いかけに、肩を竦める沙織。
「ごめんなさい。その時間はまだ、大学にいたので……」
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