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うちの高校の写真部に、みんなが密かに憧れる先輩がいた。
吉良雅(きら みやび)
見た目はパーフェクト。
180cmはある身長。
黒髪で長めの前髪から覗く切れ長の目と、スーッと通った鼻筋、薄い唇。
手足が長くて、スラッとしてて。
まるで雑誌から飛び出てきたモデルような整った容姿。
目の保養にはもってこいの、そのかっこよさ。
だけど、本人はそれがどうしたとばかりに無愛想、無関心。
それがクールだなんて、本人の知らないところで女の子達に騒がれている。
そう、陰で騒いでいるだけ。
だって、本人を目の前にしてなんて…あの凍るように冷めた視線で睨まれたら怖いもん。
写真部なのに、彼が写真を撮ってるところを見たことがないと有名だった。
撮ってるところどころか、カメラを手にしてる姿さえも見たことがない。
ほとんど活動していない幽霊部員。
ただ、名前だけが在籍しているとか、そんなウワサもあったけれど。
実際はかなりの腕の持ち主らしい。
年に何回か行われるコンクールなどで何度も入賞しているのだとか。
だけど、それがどんな写真だったのか、写真部の他に知っている人はほとんどいなかった。
いなかったというよりも、きっと興味がなかったんだ。
みんなの興味があるのは、先輩自身、その見た目だけなのだから。
遠くから見て、キャーキャー言ってるだけで。
他はどうだっていいのかもしれない。
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