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「ほら、こっち!早く!」
彼女は僕に向かって手招きした。
「短冊に書く願いはもう決まった?」
僕はいつものように彼女の後を歩きながらコクリと頷く。
「そっか、私はどうしよっかなー」
彼女は人差し指を顎に当てて、う~んと唸り出した。
だけど、それが悩んだふりだという事は分かっていた。それが可笑しくて、僕はクスクス笑っていた。
彼女の願いはもう分かっている。
彼女にも僕の願いは分かっていた。
星空をくすぐるように柔らかく揺れる笹に到着すると、町内会で配られる短冊を手にした。
二枚くださいと言った彼女に、町内会のおばさんは怪訝な表情を浮かべていた。
「願い事、叶うかな?」
そう言う彼女に僕は「叶うよ、きっと」と答えた。
隣り合わせに飾られた僕らの短冊には、
『私の友達に存在を』
『見えざる僕に姿をください』
そう彼女の文字で書かれていた。
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