あるハーレム主

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 妄想を垂れ流しながらにこにこと笑っている様を見て、奴が話の通じる相手では無いことを悟った。  こういった類の輩は、こちらがいくら正論を述べようとも、妄想力を駆使して自分の世界を守ろうとするのである。何を言っても無駄なのだ。  それならば、理屈で駄目ならば、このまま教室に戻って現実を直視させればいい。  女達はおろか、クラスメイトの誰ひとり記憶を失っていないということを知らしめ、この馬鹿げた妄想に終止符を打つのだ。  彼らの口から直接言わせるのが一番であろう。ここで俺がどうこう言うよりもよっぽど効果的だ。 「わかった、わかった。ならばお前の言ったことが本当かどうか確かめるために、一度教室に戻る」 「あっ、田淵君今の話信じてないでしょー?それに、まだ最後の問題を言ってないよ」 「歩きながらでいいだろう」 「……仕方ないなぁ」  言うが早いか、俺はさっさと歩き出した。奴がそれに着いてくる。 「ついでに言うとね、学校の先生たちも記憶を改ざんされてるんだ」 「…………」 「あとは…………、あっ、そうそう、田淵君がいつも仲良くしてた女の子たちが居るでしょ?その子達が好きなのはこの僕、有栖川仁だっていう風に、みんなの中ではなってるんだよ。もちろんあの子達自身も。これも記憶改ざんのお陰だね」  この妄想話には飽き飽きしてきた。耳を傾けるだけで体力を消費させられる気がする。  今知ったが、こいつの名前はアリスガワジンというのか。いかにもな名前だ、漫画やゲームの主人公のようである。  そうして話を聞きながらも歩き続ける内に、渡り廊下にさしかかっていた。  外を見ると、いつの間にやら雨が降り出していて、窓ガラスにぶつかった雨粒が幾多の筋を作って流れ落ちていく様が見えた。  空には分厚い雲が一面に広がっていた。先程まではまだ、太陽の光がわずかに感じられたが、今はもう、辺りは薄暗く、じめじめとした空気に包まれていた。 「もっと激しくなるね、きっと……。くふふっ、傘持ってきてよかったぁ……」  天気の話をする奴の顔に何とはなしに目をやると、その表情に俺は度肝を抜かれた。  その時、奴は表現を避けたいほどに気色悪い表情をしていたのだ。パーツが元より整っているために、顔面における配置が奇妙に崩れるとことさらに醜くなった。 「……うふっ、うふふっ。じゃあ、予備知識も伝えたし、最後の問題に入ろうかな」
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