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可哀想な彼の名は田淵ハヤト(タブチハヤト)。高校生で、その上ハーレム主である。
通説に反し、彼は他のハーレム主の様に超絶的な美貌の持ち主であったり、他を圧倒する優しさを潜めている訳ではなかった。
彼がハーレムを創ることのできた背景には並々ならぬ努力が潜んでいたのだ。
だが、努力だけではハーレムは出来ない。何かが突出していなければいけない。
その点彼は他と比べると、おかしい。
背は高いが猫背であり、髪色はつまらない黒、血色の悪い顔に不吉な笑みをたたえながら、クラゲのようにゆらゆらと歩く。
不細工ではないが、一目見れば異様な雰囲気を感じ取ることが出来るため、もはや顔面の美醜がどうこうといった問題ではない。
彼のその姿たるや、民衆でごった返す元旦の伊勢神宮の中ですらも、いとも簡単に見つけられる程の浮きっぷりであったという。
要は、見た目で他のナイスな男子から大きく水を開けられていた。
そんな残念男が、ただひとつ他を凌ぐ点といえば、それは欲望の強さであった。
中学時代はモテず、悲しい聖バレンタインや聖夏祭り、性クリスマスを過ごして泥にまみれた彼には、『ハーレムを創りたい』という強い願望があった。
場の空気や流れを読み、余人の持ちえない思考力と行動力を発揮してハーレムを創り上げた彼は、その内面からも異常さが伺えた。
つまり、欲望の為に走る彼にはハーレム主としての素質があったのだ。
以下に続くのは、異端ハーレム主、田淵ハヤトの見苦しい程に見苦しい愛と怨恨とフェティシズムの物語である。
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読者諸君、俺の名前は田淵ハヤト。
類まれなる美貌と頭脳の持ち主でありながらも、それを鼻にかける事を良しとしない澄んだ心の持ち主である。
他者からは前述とは違う評価をなされることも多々あるが、恐らく嫉妬に任せていい加減な発言をしているだけだろうから気にせずとも良い。
さて、これから始まる文書は、ハーレムを創りたいと考える輩の為にこしらえたものだ。きっと多少の手助けにはなると思われる。
美しい乙女たちに囲まれた半生から転落した俺が、どのように華麗なる復活を遂げたかを克明に記したノンフィクションである。どうか最後までお付き合いいただきたい。
まあ、怒濤の展開に圧倒された読者諸君が最後まで読むことは必至ではあるが。
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