あるハーレム主

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突然の初対面発言に面食らったものの、俺は優雅に対応した。  「いやいやいや、どう見ても田淵ハヤトだろう。誰だおまえ、じゃないよまったく」  「タブチハヤト……」  知ってるか、と彼女は他の女に尋ねる。誰もが首を横に振る。  先ほどまで口喧嘩をしていたくせに、こういう時だけ団結力を発揮している様が少し気にくわない。  こいつ等はこのような子どもじみたいたずらをするほどに幼かったのか。いわゆる悪ノリである。  悪ノリに乗ることで収拾がつかなくなって場の空気が冷める危険性があるので、ここは敢えて触れないのが得策と言えよう。 「そいで、昨日さ、雨降ってたろ?それで……」  話題を振りつつ、俺が彼女等に視線を投げ回していると、皆が一人の男を囲うようにして配置されていることに気がついた。  悔しいことに、男はかなりの美男子であった。  しかし、何故男が居るのか。  本来俺が居るべき位置に、見知らぬ男が座っていた。  今の今まで、我が野望の邪魔になりそうな好色男達の顔と名前と弱点は把握してきたつもりだったが、その男は初めて見る顔であった。  果たして俺の念入りな調査から逃げおおせた奴が居るとも思えない。  ひょっとすると「デビュー男子」やも知れぬ。地味な外見を思い切ってフルモデルチェンジしちゃった奴かもしれない。  いやしかし、そんなことをしたら大抵はクラスで浮くだろう。  この男からはそのような残念オーラは感じられない。  それならいったいこの男はなんなのか。 「……だれだ?」  俺が問うても、その男は微笑を絶やさなかった。  髪をワックスでセットして、丁度良い具合に崩した制服の着こなし。  ここではその男の顔についての形容は避けたい。まあモテるような顔だ。俺と同じく。 「……あのさ、そいつね、俺の友達なんだ。ここに転校してきたんだよ」  男が口を開いた。優しげな響きが癇に障るが、女たちはどこかうれしげだ。 「あ、なんだ。仁の知り合いだったのか」 「そうそう。今のはあいつなりの挨拶な。……ちょっと俺もひいたけど」  絶妙な間の開け方とちょっとした批判台詞に、どっ、場が沸いた。  俺をネタにして、男が笑いをつくった。しかし俺は笑わない、笑えない。 (……どういうことだ)
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