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「ねえ、どうして、こんなところで、ひとりなの?」
「…………」
「……ああ、そうか。田淵君には、友達が居ないんだったね……。でも、安心して!僕がいるじゃん!……だってふたりは、親友でしょ?友達が欲しいなら僕が手伝ってあげるし、彼女が欲しいならそれも僕が何とかしてあげる。親友なら助け合いは当たり前だよね。あ、もちろん見返りなんて要らない、要らない。困ったことがあったら何時でも言ってね、助けてあげるから、あはっ。だから早く教室に戻ろうよ。さっきのことはフォローしといたから、田淵君は、これからは上手いことやってけるから。今までがどうだったかなんて、関係ないよ。これからが大事。新しいスタートを切るんですよ。さあ、夢に向かえ若人よ!」
「………………」
「ねえ、どうして黙るの?何かまだ不安があるの?あ、いやそれとも疲労かな?やっぱり慣れない環境に最初は誰しも戸惑ってしまうしね。辛いことがあったら、いつでも相談してね、僕、田淵君ならいつでも構わないよ。……ねえ、どうしてそんなに面白い顔してるの?唇なんか噛みしめちゃってさ、眉毛も逆ハの字!もしかして、ねえ、怒ってるの?お怒り?ねえお怒りなのっ?怒髪天を衝くって感じィッ?それともあれかいっ、ガチギレってやつかいっ?ねぇっ、ねえっ、教えてよたぶちくんっ!」
「………………」
「あっ、あっ、ズルいんだァ、僕にばっかり話をさせて、自分じゃ何にも言わないんだもんなァ。そんな風に冷たい態度されたんじゃ、流石の僕も傷ついちゃうな……。しかしまあ、僕だからまだハートブレイク程度で済むけど、他の人だったらきっと大変なことになってるよ。もし田淵君に彼女さんなんか居たら、その彼女さんが今僕がされたみたいな冷遇を受けたら、きっと彼女さんは他のヒトになびいちゃうんじゃないかな……。もっと優しくて、イケメンで、面白い彼氏、作っちゃうんじゃないかな……?ねえ、どうなの?ほら、もしもの話なんだから、教えてくれたっていいじゃん。ねえ、もしそうなったら、たぶちくんどうなっちゃうの?泣くの?号泣?さめざめ?よよ?ひとりで、自室で、今みたいに唇噛みしめて、失恋ソングでも流しながら、大泣きしちゃうのかなっ?あははっ、ねえねえ、はやくはやくっ、なんかしゃべってよっ。その表情は確かに最高だけど、もっと多彩なカオしてよおっ。ねえねえたぶちくんあははははははははははははははははははは」
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