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中間テスト、最終日。
結局、東藤先生とはあの日以来まともな会話をしていない。あんなコトでもなければ、元々東藤先生とはそこまで親しい訳でも無かったし、尚且つあれから僕が避けているから余計だ。
「お前ら筆記用具を置け。答案用紙は裏返して、後ろから回収しろ」
「ぎゃー!もう終わり!?」
「俺全然ダメだったー!」
「難し過ぎるだろぉ!?東藤先生の鬼~!」
東藤先生は化学担当の教師で、先生が作るテストは群を抜いて難しいと評判だった。そのせいでクラスメートから口々に上がる不平も、先生は全くお構い無し。
「鬼で結構。普段から真面目にやってりゃ楽勝な問題ばっかだろーが、このアホどもめ」
相変わらずの口の悪さ。でも、東藤先生は以外にも生徒からは好かれている。その理由は―――。
「まぁ良く聞け。今回の中間テストの結果を期末に反映してやる。余程のバカでなきゃ赤点は避けられんだろ」
「マジ!?」
「そんじゃあ期末楽勝じゃん!」
コレだ。厳しさの後の優しさ。こんな風に飴と鞭を使い分けるから、何だかんだ言って生徒からは好かれてる。思えば僕の時と同じ。酷い事をされても、その直ぐ後には優しくされるから、拒み切れないんだ。
先生がそういう態度を取るのは僕だけじゃない。決して僕が特別なわけじゃない。分かってはいるけれど、何だか心がもやもやする。これっていったい何なんだろう。
「楽勝ねぇ。言っとくが、期末は俺が厳選した超難問出してやるからな。そう簡単に点が取れると思うなよ。今回のテスト結果を反映したにも関わらず赤点取るようなアホは、夏休み中に追試を受けろ。サボったら進級は無いと思え」
「ギャーーーッ!やっぱ鬼ーーー!!」
ちょっと鞭の方が多めだけれど。
―――先生は、あの日の事をどう思っているんだろう。
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